若手研究者海外挑戦プログラムでアラバマ州に留学した話

2年前、博士後期課程2年のときに、アメリカ合衆国アラバマ州の University of Alabama at Birmingham に留学してきたので体験記を書こうと思います。今更感がありますが、私は日本学術振興会が実施している若手研究者海外挑戦プログラムの支援を受けて留学していたので申請を考えている方の参考になれば嬉しいです(実際によく聞かれるので)。あとは、アラバマ州に関する日本語の情報がネット上に無さすぎるので、そちらの方面でも役に立てればと思って書きました。

滞在先:Department of Communication Studies, University of Alabama at Birmingham (AL, USA)
ホスト:Dr. Timothy R. Levine
期間:2018年9月30日~2019年2月21日

申請の経緯

実はわたしは元々留学目的で留学先に連絡を取ったわけではありませんでした。Levine先生が2014年に Truth Default Theory にというのを発表していて、その引用文献に未刊行の実験が含まれていたので、見せてくれないかとメールを送ったのが始まりです(快く、草稿を送ってくれました)。それが2017年の6月末でした。
その後、ちょうど若手研究者海外挑戦プログラムの募集が開始されたので、行ってみようかなと思って再度連絡を取ったのが2017年8月の中旬です。行きたいということと、CV(履歴書)を送りました。前にも海外滞在したことがあるのですが、こういう申請のときは必ずCVが求められます。就職のCVは1ページの職務経歴書ですが、アカデミアでのCVはページ無制限の教育歴+職歴+業績目録みたいなやつです。私の場合は、ちょうど Levine先生が日本でも自身の理論の妥当性検証をしたいということでお互いにメリットがあったこともあり、快諾してもらいました。
これは個人的な感想ですが、こういう海外滞在申請は、こちらからお金を持ってくる限りはあまり断られないように思います。一度だけ、そのテーマはもう研究していないからということで断られたことがありますが、以前コロラドに滞在したときも快諾してもらえましたし、周囲を見ている限りでもだめだったということは少ないように思います。必要なのは最低限の礼儀(一通目は丁寧に、Dear Dr. XXX などの肩書を書き忘れないなど)、なぜ行きたいかの理由をちゃんと説明すること、CVを求められれば提出することの3点くらいだと思います。

 

どうやって研究室を決めたか

完全にテーマで決めました。Levine先生の2014年の論文を読んだとき、私がずっと疑問に思っていたことがそのまま説明されていたので「これだ!」と思った記憶があります。Levine先生とは別に繋がりがあったわけでもなんでもなく、前述したように論文を一度問い合わせた程度です。メールのみでアプライして決めました。以前にも同様のケースで2週間コロラド州に滞在させてもらったことがありますし、海外にコネクションがなくても全く悲観する必要はないと思います。

 

渡航までの手続き

渡航前に必要な経費は、ビザ代、予防接種代、ビザをカバーできるだけの保険、航空券代、アパートの初期費用です。これで20-30万円くらいは飛んでいきます。若手研究者海外挑戦プログラムは、現地到着後1ヶ月ほどしないとお金が振り込まれないのでどうにかして建て替えないといけません。自分は貧乏学生だったので、ビックカメラSuicaカード(JR東日本のビューカードの一種)という後からボーナス一括払いにできるカードを使って支払いを全て先送りしました。手数料がかからないのでおすすめです。

ビザ(アメリカのケースです)
ビザは早め早めに対応しなければなりません。なぜならDS-2019という書類を先方から郵送で送ってもらわないといけないからです。
学振からの渡航資金証明(もちろん英語)が必要なのでそれを取得→大学の海外からの教員・学生受け入れ部署に送付→先方からDS-2019が送られてくるのでそれを持って大使館でビザの取得というのが一連の流れです。大使館でのビザの取得にあたってもいろいろ登録したりお金払ったりをしないといけないです。私は、J1ビザという区分で行きました。これは学生ビザではないので社会保障番号(SSN)の取得が可能で、滞在中に取得しておくと一生使えます。アパート借りる際に求められたりするので、持っていると将来的にも役立ちます。留学中は、一度だけ会計手続きで使いました。

予防接種
私の場合は予防接種が大学で必須だったので事前に受けてきました。MMR, Varicella, Tdap, Meningococcal, Hepatitis B と言われても何がなんだかさっぱりだったので、海外出張等に対応してくれる病院で受けました。英語で証明書を発行してくれるのは必須です。
私は、上本町のわたなべクリニックというところにいきました。予防接種の相場を知らず、会計で7万円って言われたときはびっくりして聞き返してしまいましたが、求められたもの全てを接種するとそれくらいの金額にはなります。ちなみに Hepatitis B(B型肝炎)は3回接種が必須で、早めに受けとかないと間に合わなくなりますのでご注意を。Tuberculin Testsだけは渡航後に受けろと大学に指示されていたのでそれだけ現地で受けました。自分の場合は他の予防接種も現地で受けるオプションはありましたが、英語で診察受ける自信がなかったので日本で受けてから渡航しました。

海外保険
何でもいいと思われがちですが、J1ビザには「この種の保障が含まれた保険に入れ」という明確な基準があります。しかも基準がコロコロ変わる(担当者談)ので、大学の海外受け入れ部署に必ず相談してください。よくわからなければ現地のJ1ビザ対応みたいな保険に入るのが一番安全かと思います。
私は、学研災の付帯海外留学保険というのに加入しました。学研災のオプションなので、民間の保険よりもかなり安く加入できます。申し込みは大学生協に問い合わせて担当者に繋いでもらいました。あまり普及していないみたいなので、生協の担当者も知らないことが多いです。保険証の英訳だけでは詳しく内容がわからないらしく、現地の受け入れ部署から「J1ビザに必須の保障が含まれているか確認してくれ」と問い合わせがありました。幸い含まれていたので問題なかったのですが、こうしたトラブルを避けたいのであれば、現地の大学の紹介で保険に加入するのが一番いいかと思います。

アパート
まず短期で貸してくれるところというのはあまりなく、あったとしても借りる月数が短くなるほど月の家賃が高くなることが多かったです。寮があるなら英語を話すチャンスも増えますしそれが一番だと思います(私の場合はなかったので渋々アパートを探しました)。大学の勧めもあり、私はUniversity Placeという海外からの研究員・留学生が多く住んでいるアパートに入りました。ここは社会保障番号がなくてもデポジットを払えばなんとかしてくれるところでした。
ただ、お湯が出なくなったり、部屋が臭かったり、ゴキブリがいっぱいでたり結構困ったアパートでした。退去時に返還予定だったデポジットは煙草の匂いがする(私は煙草を吸いません)といって返してくれませんでした。散々文句は言ったのですが。振り返ると、入居時からずっと部屋が臭かったので、部屋を変えてくれというなど自己主張をちゃんとするのが大事だなと思いました。
長期滞在する方は、とりあえずここを仮の住まいとしてすぐに引っ越していました。日本みたいに引っ越しへのハードルがそこまで高くないのでそれもありかと思います。家具は基本的に備え付けで、引越し当日から必要なものは食料とベッドのリネンと毛布くらいです。

 

研究

向こうでは授業に出て、暇なときは教授の研究室に行って作業したり喋ったりしていました。教授がいろんなプロジェクトに私を放り込んでくれたのがすごく幸運でした。博士課程の学生が一人もいなかったので、学生というよりは共同研究者として扱ってくれていたように思います。分析用のRのコードかいたり、教授の出版する本の図表作ったりしていました。学会発表するときも同行してくれて隣でサポートしてくれましたし、すごく面倒見のいい先生でした。2年経ったいまでもバリバリ共同研究させてもらっているので、いい出会いだったなと心の底から思います。嘘研究界隈は絶対的な研究者の数が少ないのと、教授と研究に対する価値観がすごく合ったのがずっと関われている理由だと思います。

 

英語

やっぱり最低限の語学力は必要です。現地でできたロシア人の友達が「アメリカに来たら英語が出来るようになると思っていたけど全くそんなことはなかった」と言っていたのが印象的でした。本当にそのとおりだと思います。自分の渡航時の英語力はTOEIC870、IELTS 6.0くらいでした。M1のときからコツコツDMM英会話で鍛えました。めちゃくちゃ上手なわけではないが、最低限のコミュニケーションは取れるというレベルですね。大学からもスコア提出を求められた(持っていなければ、教授が英語力をスカイプで確認)だったので、これくらいは最低限求められるのでしょう。
私が留学した大学は、TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)の課程があったので、そこの学生が留学生授業の一環として相手にチューターをしていたりと、英語学習に関しては恵まれた環境でした。滞在中は、1週間に1回発音をマン・ツー・マンで指導してもらったおかげで随分発音は良くなりました。あとは、週2回 Community English Classという留学生向けの授業も開催されていたのでそれにも出ていました。暇な時間で心理学の授業を聴講したりもしました。
アパートのラウンジにいた人やCommunity English Classの受講生と仲良くなったりしてよく遊びに行っていたのでそれも英語力向上に役立ったと思います。あとは、日本語の授業のTAとかしていました。仲良くなった人はノンネイティブの留学生か、日本語の授業を取っている学生が多かったです。仲良くなるには接点と相互の関心がないと難しいので、その2つがあったのがこうした人達だったのだと思います。日本人の友人や先生方にもすごくサポートいただきました。いざというときに頼れたり、有益な情報をくださるのはやっぱり日本人なので、こうしたコミュニティに入れさせてもらえたのはすごくありがたかったです。
あと、上記のような環境は自分で行動して作っていくしかないです。「行動したもの勝ち」の文化なので、待っているだけだと本当に何も得られずに留学が終わりそうな気がしました。自分の場合は、留学して10日目くらいに、大学の国際交流課に英語のプログラムは何かないかと問い合わせたのがすごくよかったのだと思います。部長みたいな人が丁寧に対応してくださって、いろいろと教えてくれました。そこから交友関係がぐんと広がりました。

 

アラバマ州について

日本語でアラバマ州に関する情報はほとんど存在しないのでいろいろ書いておこうと思います。

日本大学が交換留学を定期的に行っているのでここの情報が一番参考になります。
アラバマ州ガイドブック
留学体験記

治安
私は Birmingham という街に(イギリスにも同名の街があるので混同注意)いたのですが、めちゃくちゃ悪いです。全米で治安ワースト5にランクインしたことがあるくらいの街です。私も行く前は大丈夫だろという感じで留学しましたが、まあまあ怖かったです。私が留学中に起こったことですが、

・近くのクリーニング屋で銃撃事件、窓ガラスが割られる
・ダウンタウンで夜中にUBERの運転手が銃で脅されて携帯電話と財布を盗られる
・ナイトクラブで銃乱射
・よく行っていたショッピングモールで警察官に黒人少年が撃たれる(これは全米のニュースにもなりました)

というような感じです。体感では3日1回くらいのペースで誰かが殺されたというニュースが流れていたように思います。私自身も、真っ昼間に見知らぬ2人組に”Excuse me , Sir”と言われながらずっと付け回されたという恐ろしい思い出があります(近くのコンビニに逃げ込んで難無きを得ました) どんな感じか知りたい方は、アラバマのニュースサイトを数日眺めているだけでも状況が分かると思います。
大学周りはまだ治安がマシなほうですが、Birminghamは北に行けば行くほど治安が悪くなっていくと聞きました。私はFive Points South 付近に住んでいて、アムトラックの線路の北に行くことは意識的に避けるようにしていました。後は、西にある Five Points West には絶対行くなと言われました。また、田舎のほうに行けば人種差別が残っていたりもするそうです。とにかく、現地の人に情報を得て、危険な地域には絶対に行かないことが必要だと思います。あと、日が沈んだらどんなに近くても車で移動してください。人通りがないと、徒歩数分でも怖くて歩けません(突然物陰からホームレスが出てきて道を塞がれたことがあります)。

生活
Birminghamはアラバマ州最大の都市ですが、何もないです。車がないと生活の難易度が跳ね上がります。バスはありますが、明らかにヤバそうな人たちが乗っているので高くてもUBERを使ったほうがいいです。スーパーは大学から徒歩15分くらいでしたが、怪しげな人たちがたむろする通りを通り抜けていかねばならず、何度も後方確認をしながら生きていました。Publix というスーパーが宅配をしていたりもするのでそれを使うのもいいかもしれません。車を持っている友人にスーパーに連れて行ってもらったりして私は生きていました。ちなみに、空港へのバスもないので、到着した後は知り合いに頼むかUBERを使うかのどちらかでしか街に向かえません。
私はダウンタウンの近くだったのですが、バーが数軒・カフェが1件くらいで特に遊ぶところはありませんでした。友人は週末には車で3時間かけてアトランタまで出ていました。皆、Boringham と洒落をいっていたのを思い出します。

 

その他

海外転出届について

渡航の際に私は海外転出届を提出していきました。つまり、日本の住民票を抜くという行為です。以下のようなメリットとデメリットがあるので、これらを天秤にかけて選んだほうがいいと思います。他にも探したらメリット・デメリットはあるかもしれません。

メリット
・1月1日に日本にいなければその年の住民税を払わなくていい
・留学中の国民年金と国民健康保険料を収めなくて良い
デメリット
・海外で病気になったときに、日本の国民健康保険で還付してもらう制度が使えない(海外旅行保険に入っていればそんなに問題はない)
・後遺障害を負ったときに障害年金が適用されなくなる
・住民票がなくなるので帰国後の家探しが予めできない(もし家を引き払う場合は結構こまる。結局帰国してから実家に滞在しながら探しました。)

その他手続きTips

・住民票のコピーを持っていっておく:もし帰国後の家を帰国前にオンラインで探す場合は何かと求められます
・国際免許証の取得:必要なら。国や州によっては現地での免許証取得も必須なことがあります。アラバマ州は現地での試験が必須でした。
・郵便物の処理:実家に転送届を出すのがいいかと思います 自分は私書箱借りてました。数千円で全部送ってくれるので便利でした。
・在留届を提出する:したほうがいいというより、しないといけない
・家を引き払うかどうか:5ヶ月放置は怖いので私は引き払いました。キュラーズでトランクルームを借りてそこに荷物は入れてました。

個人的に持っていったほうがいいと思ったもの

・100均のマスク:意外に売ってないです
・ビオフェルミン:これも売ってない
・洗顔料泡立てるやつ:見かけないです
・お風呂のボディタオル:これも、ネットみたいなやつしかないです
・海外キャッシングのできるクレジットカード:基本的にカードなので、現金は持ち歩かずに、必要なときだけ下ろすという感じで
・現地のamazonにアカウント作っておく:可能なら、当日から必要になる日用品をネットで買っておいてもいいと思います
・Uberのアカウントを作っておく:めちゃくちゃ使います
・包丁:向こうの包丁、めちゃくちゃ使いにくいです。とにかく切れない
・日本の調味料:特に「ほんだし」とか。アジアンマーケットがあれば手に入ることもありますが高いです。
・携帯電話:海外はSIMフリー端末でもBand(周波数帯)が対応してないと使えないことがあります。国際的に発売しているsimフリーiPhoneかPixelなら使えないことはないでしょう。ただ、iPhoneやPixelもキャリアを通して買うとBand制限がかかっていることもあるので注意してください。ヨーロッパだとBandも似ているのですが、アメリカは全く違うので、ちゃんと日本で対応してるやつを買いました。現地では mint mobile という買い切りのMVNOを使っていました。大手通信業者と正式に契約しようとなったら結構面倒です。
SmartTalk (IP電話)の契約:申し込みとかで、ネットの窓口がなくて電話してくれみたいなのが本当に多いです。例えば、アパートのインターネットの契約と退会は電話でしかできませんでした。IP電話契約しておけば、wifiさえあればどこでも電話できるので作っておくと便利です。
・ネットを先に申し込んでおく:もしアパートに住まれるなら、ネット開通まで結構かかります。見越して先に予約しておくのがいいでしょう。申し込みで電話しないといけないなら日本からでも前述のIP電話使えばいけるはずです。
・現地で買おうとすると色々高く付くので、私はスーツケース2つに、文房具、化粧水、ジップロックなど必需品はとりあえず持っていって無くなり次第買い足していました。

以上、こんな感じでしょうか。留学生活はとっても楽しかった記憶がありますし、キャリアとしても有益だと思うのでぜひ挑戦してほしいです!

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